学会長挨拶
持続可能な社会を創る作業療法
人生100年時代の超高齢社会の到来、災害への対応、AIとの共存など、既に始まっていることから近未来を見据え、私たち作業療法士の役割を考えたい、そして知っていただきたい。変化していく時代と共に必要とされることに応じることのできる力を、いつの時代であっても大切にしたいこと、そして、確かな知識と技術に基づく作業療法を私たちの手でつなげていくことが使命と思います。
そこで、第56回日本作業療法学会は、テーマを「持続可能な社会を創る作業療法」とし、京都で開催する準備を開始しております。
皆さまご存じのとおり、人間や社会、世界的な視点での持続可能性(サスティナビリティ)の考え方は21世紀の重要な概念となっています。かつては科学が解決するものとされてきた持続可能性の問題は、自然環境や社会経済システムに関わる多様な問題が複雑に絡み合う広範なものです。今や最大の政治課題でもあり、具体的な目標や取り組みなどが国内外で提案され、それに資する技術や政策などが議論されています。社会の将来、目標に到達するためにはこのままでよいのか、目標を目指すためにはどうするとよいのか、これらを考えていくことなのだと思います。
私たち作業療法士も、次世代に持続可能な地球と社会を残すために、問題解決に重要な役割を担うことができるものと信じています。超高齢社会に突入している我が国において、その社会の解決すべき問題は生活と密着し、混然一体となっています。
たとえば、地域包括ケアはまさにその考え方の延長線上にあるといえましょう。教育や就労支援もそこにあります。本学会でこれまで追及してきた主要な課題でありますし、すべての人々の作業や作業療法の課題と言えると考えます。
そこで、今回私たちの社会の未来を意識し、なぜこれらが問題となるのか、私ども作業療法士の共通認識とすること、そして、作業療法士がすでに行っている貢献について、世の中に知っていただくことを狙いとしたのが、テーマ選択の理由です。
持続可能性、あるいは持続可能な開発目標は、私たち作業療法士としての専門職の生活に、そして、私たちすべての個人生活に関係しているものです。未来に影響を及ぼす可能性がありますし、既に影響させていると思います。
悠久の都、京都で開催されます学術大会で、そんな作業療法士の実践を示していただけることが楽しみです。新型コロナウイルス感染症の荒波にもまれておりますが、無事乗り切り、多くの方々にご参加いただけますことを心よりお待ちしております。
- 第56回日本作業療法学会
学会長村田 和香
(群馬パース大学 リハビリテーション学部)